「子どものため」と始めた習い事が、いつの間にか親の心身を追い詰める「親の習い事」になっていませんか?
働くママにとって、子どもの成長を願う気持ちと、限られた時間の中で送迎や費用を工面する現実との間で揺れ動くのは日常茶飯事です。特に、「送迎の負担」は、費用を上回る最大のストレス要因であるという調査結果も出ています。
私自身、夫に頼ることができない平日は、仕事中も送迎時間が気になり、集中できないことも多くありました。
この記事では、子どもの習い事に関する平均的なデータから、働く家庭が直面する「費用」と「送迎」のリアルな負担、そしてその限界を乗り越えるための具体的な対策までを、徹底的に解説します。
データで見る子どもの習い事の「今」
まず、現代の日本の子どもたちがどのくらいの習い事をし、どのくらいの費用がかかっているのか、現状を確認しましょう。
平均的な習い事の数と費用
一般的なデータによると、小学生の習い事の平均的な状況は以下の通りです。
| 項目 | 平均的な回答 |
| 習い事の平均個数 | 1〜2個が最も多いが、3個以上という家庭も少なくない。 |
| 習い事の月額費用 | 1万円〜3万円未満が最も多いボリュームゾーン。 |
| 人気の習い事 | 水泳、英会話、ピアノ・エレクトーン、学習塾・通信教育、体操・ダンスなどが定番。 |
もちろん、地域差や家庭の方針によって大きく異なりますが、複数の習い事を組み合わせて月額数万円を支出している家庭が多数派です。
働くママ・パパが直面する最大の負担は「送迎」
費用以上に、共働き家庭にとって深刻な問題となっているのが、時間的な負担です。
教育メディアなどが実施したアンケート調査によると、子どもの習い事で「最もつらいこと」のランキングで、「送迎」が「費用がかさむ」を抑えて第1位になることが多いことが明らかになっています。
実際に、ある調査では**4人に3人のママが「送迎が大変」**と回答しており、これが原因で習い事を諦めた経験を持つ保護者も4割以上に上ります[^4.2]。
【送迎が負担になる具体的な理由(ワーママのリアルな声)】
- 仕事の終業時間と習い事の開始時間がギリギリで、毎日が時間との戦い。
- 習い事が終わるまでの「待機時間」に何もできず、実質的な拘束時間が長い。
- 急な子どもの体調不良や悪天候でも、送迎を優先しなければならないプレッシャー。
- 兄弟・姉妹で習い事の時間が異なり、送迎のダブルヘッダーになる。
特に「待機時間」は、「貴重な30分〜1時間、家に帰って家事をするには短すぎる。でも、職場で仕事を続けるには集中できない」という宙ぶらりんな状態を生み出し、心理的ストレスとなります。
習い事の「限界」はどこにある?3つの判断基準
では、「何個まで」が限界なのでしょうか?
「限界」は家庭の状況によって異なりますが、以下の3つの基準でチェックすることで、ご自身の家庭の許容範囲を知ることができます。
基準1:送迎の「時間的キャパシティ」の限界
送迎の負担を数値化し、現実的に無理がないかを確認します。
チェックポイント
- 週の合計送迎時間: 往復の時間に加え、「待機時間」も含めたトータルの時間を算出する。
- 例:習い事A(往復30分+待機30分)×週2回=週2時間
- 例:習い事B(往復1時間+待機なし)×週1回=週1時間
- 合計:週3時間
- 夫婦の送迎分担のバランス: 送迎がどちらか一方に偏っていないか。夫の担当が「休日の午前中」だけになっていないか。
- 送迎は「どちらの仕事が早く終わるか」ではなく、「どちらのキャリアを優先するか」という夫婦の価値観にも関わる問題です。
- 突発的な「予備時間」の有無: 子どもの体調不良や、仕事の残業など、イレギュラーな事態に対応できる「予備の1時間」を週にどれくらい確保できているか。
送迎時間が「週の合計5時間」を超えると、平日の夕食準備や翌日の準備に深刻な影響が出始める家庭が多いようです。
基準2:家計の「経済的キャパシティ」の限界
費用は、月謝だけでなく、初期費用や遠征費、維持費まで含めて考える必要があります。
チェックポイント
- 月謝・教材費: 毎月固定でかかる費用。
- 初期費用・道具代: 入会金、ユニフォーム、楽器、水着など、最初の大きな出費。
- 隠れた維持費:
- 発表会/大会参加費: ピアノの発表会、ダンスの衣装代、スポーツの遠征費など、数万円〜数十万円かかることも。
- 送迎の交通費: ガソリン代、駐車場代、公共交通機関の費用。
- 保護者の係・当番費: お茶当番や役員活動のための交通費や時間。
費用が家計に占める割合が**「手取り収入の5%〜7%」**を超えると、貯蓄やレジャー費を圧迫し始め、家計全体が苦しくなりがちです。
基準3:子どもの「心理的キャパシティ」の限界
親が頑張りすぎていても、子どもが楽しんでいなければ本末転倒です。
チェックポイント
- 習い事への意欲: 「行きたくない」「休みたい」という発言が頻繁に出ていないか。
- 疲労度: 習い事の後の夕食時や寝かしつけ時に、機嫌が悪くなったり、異常に眠そうにしたりしていないか。
- 自由時間: 学校の宿題以外で、完全に自由な遊び(テレビ、ゲーム、友達との遊び)をする時間が十分に確保できているか。
子どもの「自由時間」が失われ、常にスケジュールに追われている状態は、親だけでなく子どもの心身の健全な発達にも悪影響を及ぼしかねません。
送迎ストレスを軽減する【現実的な解決策】5選
「限界」を感じながらも、子どもの可能性を伸ばすために習い事を続けたい。そんな働くママ・パパのために、送迎の負担を軽減する具体的な対策を紹介します。
夫婦で「名ばかり分担」から脱却する
「手伝うよ」ではなく「担当する」に変えることが重要です。
- カレンダーの共有: Googleカレンダーなどで、子どもの習い事、夫婦の仕事の予定を色分けして共有。
- 「送迎担当表」の作成: 「月曜日のスイミングは夫、水曜日のピアノは妻」と、担当者を明記した表を冷蔵庫などに貼る。
- 「夫の有給」の活用: 子どもが熱を出した時だけでなく、運動会や発表会前の準備、土日の遠征など、「平日以外」の準備や付き添いにも有給を使ってもらう。
- あるアンケートでは、**「花束よりも夫の有給が心にしみる」**というリアルな声も寄せられています[^2.2]。
習い事の「場所・曜日」を再検討する
送迎の手間を最小限に抑えるための配置換えを考えます。
- 「自宅からの距離」より「動線」を優先:
- 自宅から遠くても、通勤経路の途中にある習い事を選ぶ。
- 学校の校庭や体育館、または学童クラブで実施される習い事を選ぶ。
- 兄弟・姉妹の習い事を同じ施設、または同じビル内にまとめる。
- オンラインの活用: 英会話やプログラミングなど、オンラインで質の高いレッスンが受けられる習い事に切り替え、送迎をゼロにする。
外部サービスを積極的に利用する
費用はかかりますが、心身の健康と時間の確保を考えれば、投資の価値があるサービスです。
- 子どもの送迎サービス(キッズタクシー)の活用:
- 最近は、習い事への送迎を専門に行うサービスや、タクシー会社と連携した安全性の高い送迎サービスが登場しています[^4.5]。相乗りやAIによる効率的なルート設定で、比較的安価に利用できるケースもあります(例:片道500円など)。
- 料金が有償でも「継続利用したい」と回答した保護者が100%という実証実験の結果もあり、働く家庭の切実なニーズがうかがえます[^4.5]。
- 地域のネットワークを活用:
- 同じ習い事に通う近所のママ・パパと協力し、交代で送迎し合う**「送迎シェア」**を提案する。
「やめる勇気」と「休む選択肢」を持つ
すべてを頑張りすぎない「ゆるさ」も、継続のためには不可欠です。
- 一旦「休会」する: 「この習い事をやめたら、これまでかけたお金と時間が無駄になる」というサンクコスト効果にとらわれない。一度休会して、親子で自由な時間を過ごし、本当に必要か再検討する。
- 習い事を「季節限定」と割り切る: 水泳は夏だけ、スキーは冬だけなど、期間限定にすることで、費用と時間の負担を集中させない。
- 子どもの意見を尊重する: 興味が薄れた習い事は、無理に継続させず、やめることも大切な決断だと伝える。
まとめ:習い事は「親の幸せの延長線上」にある
子どもの習い事の「限界」は、「親の心と体の健康」が蝕まれ始めた瞬間です。
習い事の目的は、子どもの可能性を広げることですが、そのために親が疲弊し、家庭内の空気が悪くなってしまっては本末転倒です。
子どもの習い事の数や費用を決めるときは、以下のポイントを常に意識してみてください。
- 時間的限界: 週の送迎負担は**「夫婦の合計労働時間」**を圧迫していないか?
- 経済的限界: 費用は**「将来の貯蓄」や「家族のレジャー」**を犠牲にしていないか?
- 心理的限界: 送迎のストレスで、「子どもを笑顔で迎えられているか」?
「子どものため」の習い事が、**「親の幸せの延長線上」**にあるかどうか。ここが、働く家庭にとっての本当の「限界点」を見極める大切な視点となるでしょう。
【参考・引用元】
[^4.1]: TOPPAN LIFE SENSING. 習い事で最も辛いことランキング第1位は「送迎」の負担!送り迎えの悩みを解決するサービスも紹介. 2025年5月8日.
[^4.2]: キッズライン. 「私たち、送迎問題で習い事あきらめました… 」子供の送迎、みんなどうしてる?. 2018年7月11日.
[^4.5]: 国土交通省. コラム 習い事への子ども送迎サービス.
[^2.2]: Domani. すべての働くママが経験済み!? 共感しかない”ワーママのあるある”BEST5. (「花束よりも夫の有給が心にしみる」のエピソードを参考に記述)
※本記事内のデータは、複数のアンケート調査やメディアの情報を総合して記載しており、特定のデータポイントは引用元を明記しています。最新のデータや調査機関により数値は変動する可能性があります。

