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ビジネスパーソンにとって、名刺交換は単なる紙のやり取りではありません。それは、あなたの会社とあなた自身の第一印象を決定づける、最初の重要な儀式です。
私は経理中心の業務ですが、財務監査やシステム関係の方々の対応は数多くあります。はじめは緊張して対応がばらばらでしたが、慣れてくればスムーズに名刺交換を行うことができるようになりました。
研修で習ったはずなのに、なぜか自信が持てない。毎回「これで合っているかな?」と不安になる。そんな「名刺交換が苦手」という意識を今日で完全に克服しましょう。
このガイドでは、基本マナーから、複数人との複雑な交換、そして「もらった後」のフォローまで、すべてのプロセスを網羅的に解説します。
準備と基本動作 – 交換前の心構え
名刺交換の成功は、相手と対面する前の準備段階で9割決まります。
名刺のチェックリスト
枚数の確認と汚れの防止
商談に向かう前に、名刺入れの中に十分な枚数(通常は予備を含めて20~30枚程度)があるか確認します。また、名刺は相手の分身。折れたり、汚れたりしていないか確認し、綺麗な状態を保ちます。
名刺入れの準備
名刺入れは、名刺交換の際に**「台座」**として使用する非常に重要なツールです。
- 場所: 常に胸ポケットやバッグの取り出しやすい場所に保管し、すぐに取り出せるようにしておきます。
- 素材: 革製や金属製で、ビジネスにふさわしい、清潔感のあるものを選びましょう。
交換の場所と立ち位置
原則として、名刺交換は着席前に行います。
- 立ち位置: 名刺交換をする際は、テーブル越しではなく、必ずテーブルの横に出て、相手と正対して行います。
- 姿勢: 立ち姿勢で、背筋を伸ばし、にこやかな表情で行います。
実践!名刺交換の「渡す」「受け取る」基本マナー
名刺交換の動作は、「渡す」「受け取る」そして「同時交換」の3パターンに分けられます。すべてに共通するのは、**相手より低い位置で行う「謙譲の精神」**です。
渡す側のマナー:低く、丁寧に
名乗りと差し出し
自分の名刺は、両手で持ち、相手に文字が読めるよう正面を向けて差し出します。
- セリフ: 「わたくし、〇〇株式会社 〇〇部の**【自分の氏名】**と申します。よろしくお願いいたします。」
- 位置: 相手の名刺入れや差し出した名刺よりも、常に自分の名刺が少しでも低い位置になるように意識します。これは「へりくだる」姿勢を示すためです。
名刺の渡し方
名刺に指がかかると失礼にあたります。氏名や会社ロゴなど、相手が最も見てほしい情報部分には指をかけないように注意し、名刺の下部を持って渡します。
受け取る側のマナー:両手で敬意を表す
受け取りの動作
相手が差し出した名刺は、必ず両手で丁寧に受け取ります。指は名刺の下端の角に添え、相手の指紋やロゴに触れないように配慮します。
- セリフ: 「頂戴いたします。」
確認と復唱
名刺を受け取ったら、すぐに自分の胸の高さまで持っていき、氏名を一読します。 「〇〇様ですね、よろしくお願いいたします」と氏名を復唱することで、名刺の受け渡しが完了したことを確認し、同時に聞き間違いを防ぎます。

同時交換の美しい流れ
ビジネスシーンの多くは、自分と相手が同時に名刺を差し出す「同時交換」となります。
- 右差し左受けの原則:
- 右手で自分の名刺を低く差し出し、名乗ります。
- 左手で相手の名刺を受け取ります。
- 両手での再受け取り:
- 左手で受け取った名刺を、すぐに両手で持ち直します。(右手で名刺を渡したため、片手になった名刺を両手で扱うことで敬意を表します。)
- 名刺入れの上に置く:
- 両手で持った名刺を、自分の名刺入れ(台座)の上に丁寧に置きます。
応用編 – 複数人との交換と上席不明時の対応
最も苦手意識を持つ人が多いのが、複数人との名刺交換です。特に「上席(役職が一番上)が誰かわからない」という状況への対処法を習得しましょう。
相手が複数の場合
交換の順番の原則
相手側の人間が複数の場合、役職が一番上の方(上席)から順に交換していくのが原則です。
- 上席の特定: 挨拶の順番や、着席位置(基本は奥の席が上座)から上席を判断します。
- もし上席が不明な場合: 順番にこだわりすぎて交換が滞る方が失礼です。先方から「〇〇から順番に」と促されればその指示に従い、指示がない場合は入口に近い方(末席)から、または挨拶をしてきた順番にスムーズに交換を進めます。
自分の側が複数の場合
上司と同行している場合は、必ず上司が先に交換を行います。
- 渡す順番:
- 上司が相手側の上席から順に交換します。
- 上司の交換が終わった後、自分が改めて相手側の上席から交換を始めます。
もし名刺を切らしてしまったら
もし予期せず名刺を切らしてしまった場合でも、慌てず正直に謝罪し、誠意を見せることが大切です。
- 対応: 「大変申し訳ございません。あいにく名刺を切らしておりました。後日、改めて郵送させていただきます。」と丁重に謝罪します。
- 情報提供: その場で口頭で会社名、部署、氏名を伝え、メモを取ってもらうよう依頼するか、自分の名刺情報を書いたメモを渡します。
商談中のマナー – 名刺は「席次」の分身
交換が終わった後、受け取った名刺をどう扱うか。ここに、相手への真の敬意が現れます。
名刺の席次ルール(配置)
受け取った名刺は、商談中、テーブルの上に相手の着席位置に合わせて並べます。これは、相手の氏名と役職をいつでも確認できるようにするためです。
- 名刺入れの役割: 一番上席の方の名刺を、名刺入れの上に置いて「台座」代わりにします。名刺入れの上に名刺を置くことで、最も重要な名刺を丁寧に扱うことを示します。
- その他の名刺: その他の名刺は、台座の横に席順通りに並べます。
⚠️ 絶対NG: 名刺を重ねて置く、テーブルに直置きする、資料の下に敷くといった行為は、相手への敬意を欠く行為として厳禁です。
商談中の注意点
- メモはしない: 相手の目の前で名刺にメモを書き込むのは非常に失礼です。メモは帰社後に行います。
- 氏名を呼ぶ: 商談中、相手の氏名を見ながら「〇〇様のおっしゃる通りです」「〇〇様の部署では」などと意識的に氏名を呼ぶことで、話を真剣に聞いている姿勢と、名刺を大切に扱っていることを示すことができます。
- 確認のための利用: 役職や氏名を忘れてしまった場合、目線だけで名刺を確認し、すぐに会話に戻ることで、円滑なコミュニケーションを保てます。
名刺をしまうタイミング
名刺をしまうタイミングも重要です。タイミングが早すぎると「もう話は終わりか」という印象を与えかねません。
- タイミング: 商談が完全に終了し、相手側が名刺をしまい始める、または退席を促された時など、「場が動いた」タイミングで行います。
- 動作: 「失礼いたします」と一言添えてから、テーブルの端で席次順に名刺入れに丁寧にしまいます。
⚠️ 注意点: 名刺をしまう際は、名刺入れに入れるのが基本です。スーツのポケットや財布、カバンに直接入れるのはマナー違反です。
帰社後のフォローアップ – 名刺交換の目的達成
名刺交換の真の目的は、今後のビジネスに繋げることです。帰社後のフォローを徹底しましょう。
整理と情報追記
受け取った名刺は、あなたの重要なビジネス資産です。
- 日付と内容のメモ: 帰社後すぐ、あるいは席に戻ってから、名刺の**裏面(または名刺管理ツール)**に、以下の情報を簡潔にメモします。
- 交換した日付と場所
- 商談で話した具体的な内容(例:〇〇プロジェクトの見積もり依頼、〇〇部署の責任者)
- 相手の容姿や特徴(次回会う際の記憶の手がかり)
- データ化と保管: 名刺ファイルや名刺管理アプリを使ってデータ化し、探しやすいように分類して保管します。
お礼メールの迅速な送付
名刺交換後、最も大切なマナーは**「お礼メール」**です。
- 送付のタイミング: 原則として、交換した日のうちに、遅くとも翌営業日の午前中までに送付します。
- 内容の工夫: 単なる定型文で終わらせず、商談で具体的に話し合った内容や、相手から受けたアドバイスなど、パーソナルな要素を盛り込みます。
- 例:「〇〇様よりいただいた**(具体的な話題)**についてのご意見、大変参考になりました。早速、社内で共有し、今後の企画に活かしてまいります。」
まとめ:名刺交換は「敬意」の表現
名刺交換を苦手に感じるのは、手順やルールが多いからです。しかし、そのすべてのルールは**「相手への敬意」**を示すために存在しています。
「常に相手よりも低い位置で、丁寧に、そしてスムーズに。」
この心構えさえあれば、多少のミスがあっても相手に不快感を与えることはありません。今日学んだ知識を武器に、次回の名刺交換では自信を持って、あなたの魅力を伝えてください。

