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私の経験談です。夜19時。帰宅し、ぐったりした子どもを抱えながら、片手で冷凍うどんをレンジに入れ、もう片方の手で子どもの着替えを引っ張り出す。そんな戦場のような時間帯に、ポケットでケータイが震えます。嫌な予感がしました。
「ごめん、急な付き合いで飲みになった。飯いらない。遅くなる」
その短い一文を見た瞬間、目の前が真っ暗になるような、あるいは心の中で何かがパチンとはじけるような感覚を覚えました。
「こっちは今日、子どもが熱を出して仕事を調整したのに」 「明日どうするかで頭がいっぱいだったのに」 「明日の仕事の準備、子どもが寝たあとにやるつもりだったのに」
「いいな、あなたは『付き合い』という魔法の言葉ひとつで、自分の好きな場所へ行けて。私には、選択肢すらないのに」
そう問い詰めたい気持ちを飲み込んで、熱で火照った子どもを抱きしめる。かつての私は、そんな夜を数え切れないほど過ごしてきました。そして、夜遅く、お酒の匂いをさせて「ただいま〜」と悪びれずに帰ってくる夫の顔を見るたび、激しい怒りと、それ以上に深い「虚しさ」で涙が止まりませんでした。
今日は、そんな「飲み会夫」へのもやもやを抱えて、独りぼっちで戦っているあなたへ向けて、このブログを書きました。あなたのその怒りは、わがままでも何でもありません。正当な叫びなのです。
なぜ私たちはこれほどまでに「もやもや」するのか
なぜ、父親は「自分の意志」で行動を決められるのに、母親は「家庭の状況」がすべての行動基準になるのでしょうか。この理不尽さの正体を少し整理してみましょう。
「ケアの責任者」という重圧
今の社会では、共働きであっても「育児の最終責任者は母親」という無意識の前提が根強く残っています。パパが飲み会に行くときは「誰かに許可を取る」という感覚が薄い反面、ママが飲み会に行くときは、数週間前から夫の機嫌を伺い、離乳食を作り置きし、段取りを完璧に整えて、ようやく「行かせてもらう」というスタンスになりがちです。この「非対称性」が、もやもやの根源です。
「仕事」を免罪符にする夫の心理
多くの夫にとって、飲み会は「仕事の一部」であり「付き合い」です。彼らは、外で社会的な役割を果たしている自分を肯定しています。しかし、その「仕事」を全うできるのは、家で誰かが24時間体制の「育児という無償労働」を引き受けているからです。夫にはその「支えられている自覚」が圧倒的に足りていないのです。
孤独なマルチタスクと絶望的な温度差
ママは常に、数手先を読んで動いています。「今夜熱が上がったら明日はどうする?」「朝のゴミ出しは?」「連絡帳に何て書く?」。脳内のタブが常に10個以上開いている状態です。 一方、飲み会に行く夫の脳内タブは「目の前のビール」と「仕事の話」だけ。この圧倒的な「解像度の差」が、ママを孤独にさせます。「私の苦労を、この人は1ミリも想像すらしていないんだ」という絶望感です。

言い争いが逆効果になる理由:怒りの下にある「本音」
夫が帰宅した瞬間、「なんでこんなに遅いの!」「子どもが熱を出してるの分かってるの?!」と爆発してしまうのは当然です。でも、残念ながら、怒りをぶつけるだけでは夫は変わりません。
怒られた夫は、反射的に「防衛本能」を働かせます。 「俺だって好きで行ってるわけじゃない」「仕事なんだから仕方ないだろ」「お前だってこの前……」と、不毛な過去の掘り返しが始まります。これでは、あなたの心は1ミリも晴れません。
ここで一度、立ち止まってみてください。 あなたが夫にぶつけたかったのは、本当に「怒り」だけでしょうか。
怒りのフィルターを一枚めくってみると、そこには**「悲しみ」と「寂しさ」**が隠れていませんか?
- 「一人で看病するのがつらかった。一緒にいてほしかった」
- 「私の仕事だって大切なのに、軽んじられているようで悲しかった」
- 「家族のチームメイトとして、頼りたかった」
この「一次感情(怒りの前の素直な気持ち)」を自分自身で認めてあげることが、解決への第一歩になります。
夫に伝わる「円満な交渉術」:我慢を卒業する4つのステップ
感情をぶつけるのではなく、夫という「チームメイト」を教育し、動かすための戦略が必要です。
「I(アイ)メッセージ」で本音を届ける
「あなたは(You)いつも勝手ね」と言うと、相手は攻撃されたと感じます。 これを「私は(I)……と感じた」に変えてみましょう。
「今日、子どもが熱を出して私はすごく不安だった。だから、あなたが飲み会に行くと聞いた時、一人で放り出されたみたいで悲しかったんだ」
これだけで、夫の受ける印象はガラリと変わります。攻撃ではなく「相談」として届くようになるのです。
育児・家事を「数値化」して可視化する
男性は、感情論よりもデータや数字に納得しやすい生き物です。 「毎日大変なんだから!」と言う代わりに、一週間のスケジュールを書き出してみましょう。
- 夫の自由時間:週○時間(通勤時間、昼休み、飲み会含む)
- 妻の自由時間:週○時間(ほぼゼロ)
- 子どもの急な病気への対応回数:夫○回、妻○回
この表をリビングに貼っておくだけで、言葉で100回説明するより効果がある場合があります。「不公平」を感情ではなく「事実」として突きつけるのです。
「当日の飲み会」は原則NGというルール化
「付き合い」をすべて断れとは言いません。しかし、「当日の急な誘い」については、明確なルールを設けましょう。
- 当日の連絡は、妻の承諾がない限りNG。
- 子どもの体調が悪い時は、仕事の接待であっても一次会で帰宅する。
- 飲み会に行った翌日の朝は、パパが子どもの世話をすべて担当する。
こうした具体的な運用ルールを、お互いが冷静な時(ここが重要です!)に話し合っておくのです。
「感謝」という名のスパイスを忘れない
正直、イライラしている時に「ありがとう」なんて言いたくないですよね。でも、これは作戦です。 夫が少しでも早く帰ってきたり、子どもの世話をしてくれたりした時は、「早く帰ってきてくれて助かった、ありがとう」と過剰なくらい伝えてみてください。 人間は「感謝される場所」に帰りたくなります。家を「怒られる場所」から「感謝される場所」に変えることで、夫の足は自然と家に向くようになります。
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「いい母親」のハードルを下げる
夫が飲み会でいない夜。そんな日は、家事を一切放棄していい日だと決めてしまいましょう。 夕食はレトルト、お風呂もパスしていい。掃除もしない。子どもと一緒にダラダラして、早めに寝てしまう。 「夫がいないから大変」ではなく「夫がいないからこそ、徹底的に手を抜く」という発想の転換です。
「自分の予定」を先に予約する
「夫が飲み会に行くから、私は我慢する」という思考サイクルを断ち切りましょう。 一ヶ月の始まりに、まず自分の美容院や友達とのランチ、あるいは一人でカフェに行く時間をカレンダーに書き込んでください。そして夫に宣言します。「この日は私、出かけるからよろしくね」と。 最初は罪悪感があるかもしれません。でも、あなたが笑顔でいることが、子どもにとっても、そして実は夫にとっても一番の幸せなのです。
おわりに:あなたはもう、十分に頑張っています
かつての私は、夜遅くに帰宅した夫に「お帰り」すら言えず、布団の中で悔し涙を流していました。でも、勇気を出して自分の「悲しみ」を伝え、一つひとつルールを作っていくことで、今では夫も「今日は行っても大丈夫かな?」とまず相談してくれるようになりました。
子どもが小さい時期は、本当に一瞬で、そして永遠のように長く感じる過酷な日々です。 でも、このもやもやを放置しないでください。あなたの心を守れるのは、あなただけです。
「母親なんだから我慢しなきゃ」という言葉で、自分の心を殺さないで。 あなたは、一人の人間として、もっと自由で、もっと大切にされていい存在なのです。
今夜、もし旦那さんが飲み会でいなくて、あなたが一人でスマホを見ているのなら。 まずは温かい飲み物を飲んで、自分に「今日もお疲れ様、よく頑張ったね」と言ってあげてください。
明日の朝、少しだけ勇気を出して、旦那さんに本音を伝えてみませんか? 「昨日はつらかったよ」その一言から、新しい二人の関係が始まるはずです。

