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「あの時、食べ方を厳しく直しておいてくれて、本当によかった。今、つくづく思うよ」
成人した子供から不意に言われたこの言葉に、私は胸が熱くなるのを抑えられませんでした。
親にとって、しつけは孤独な戦いです。特に食事のマナーは、毎日のこと。注意する方もされる方もエネルギーを使います。
今、食事のしつけで悩んでいる親御さん、あるいは家族の中で一人、マナーの価値観が合わずに孤軍奮闘している方へ。私の長い戦いと、その先にあった結末をお話しします。
目の前にいた「反面教師」と、夫との価値観のズレ
私がこれほどまでに食事のマナーに執着したのには、理由があります。 結婚して驚いたのは、義父の食べ方でした。
口に食べ物を入れたまま喋る、クチャクチャと音を立てる、肘をつく……。 悪気はないのでしょうが、同席する私にとっては苦痛の時間でした。そしてさらにショックだったのは、それを日常として育った夫もまた、義父ほどではありませんが、自分のマナーに無頓着だったことです。
私が子供に「口を閉じて噛みなさい」「肘をつかないで」と注意するたびに、夫は横からこう言いました。 「いちいち、うるさいなあ。家の中なんだから楽しく食べさせてやれよ」
その一言に、どれほど孤独を感じたか分かりません。でも、私はここで引き下がるわけにはいきませんでした。今、私が諦めてしまったら、子供たちはこの食べ方を「当たり前」だと思い込み、そのまま社会へ出て行ってしまう。それは、将来の子供たちに「恥」という重荷を背負わせるのと同じだと思ったのです。
周囲は言わないけれど、心の中で「ジャッジ」している
なぜ、そこまで厳しくする必要があったのか。それは、食事のマナーが**「その人の評価を無言のうちに決めてしまう」**からです。
現代では「クチャラー」という言葉があるように、咀嚼音を立てる人への視線は非常に厳しいものがあります。周囲の人は、マナーの悪い人に対して「育ちが悪い」「配慮が足りない」と感じても、直接注意はしてくれません。ただ静かに、距離を置くだけなのです。
特に不快感を与えるポイント
私が子供たちに、しつこいほど言い続けたのは以下の5点です。
- あいさつ:「いただきます」「ごちそうさまでした」は必ず!
- 口を開けて食べない(咀嚼音を出さない): 音は生理的な嫌悪感に直結します。
- 詰め込みすぎない: 余裕のなさは、品性の欠如に見えてしまいます。
- 口にものがあるうちは話さない: 飛沫や、噛んでいる中身が見えるのは最大のタブーです。
- 肘をついて食べない: 姿勢が崩れると、食事そのものへの敬意が失われます。
これらは、一度癖になってしまうと、大人になってから直すのは至難の業です。だからこそ、私は「家庭内の嫌われ役」になる覚悟を決めました。
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孤独な戦い—義父や夫の前で「わざと」注意する
しつけにおいて、私が心掛けたのは「一貫性」です。 夫に「うるさい」と言われようが、義父が横でマナー違反をしていようが、私は子供たちへの注意をやめませんでした。
時には、義父や夫がマナーに反した食べ方をしているその瞬間、あえて子供に向かってこう言うこともありました。 「〇〇、お口は閉じて食べようね。クチャクチャ音がすると、周りの人は気持ちよくご飯が食べられないんだよ」
これは、子供へのしつけであると同時に、大人たちへの「静かな抗議」でもありました。当然、場の空気はピリつきます。夫から嫌な顔をされることもありました。 それでも、私は自分自身が一番綺麗なマナーで見本となるよう、背筋を伸ばし続けました。「お母さんの食べ方が一番かっこいい」と、子供が本能で感じてくれることを信じて。
「クチャラー」と呼ばれないために—直し方としつけのコツ
もし今、お子さんの食べ方で悩んでいるなら、以下のステップを試してみてください。
- 「なぜダメか」を言語化する: 単に「ダメ!」と言うのではなく、「一緒に食べている人が美味しく食べられなくなるからだよ」「あなたのことが大好きだから、外で恥をかいてほしくないんだよ」と、愛ゆえの理由を伝えます。
- 客観視させる: 今はスマホで動画が撮れる時代です。自分の食べている姿を一度見せてあげると、本人も「あ、かっこ悪いな」と気づくきっかけになります。
- 根気強く、でも淡々と: 怒鳴る必要はありません。マナー違反を見つけるたびに、お経のように「お口、閉じようね」「肘、下ろそうね」と言い続ける。これが一番効きます。

20年後の答え合わせ
あれから長い年月が経ち、子供たちは社会人になりました。 仕事の会食や、大切な人との食事の機会も増えたようです。そんな中で、冒頭の言葉を私にくれたのです。
「あの時、お母さんがうるさく言ってくれたおかげで、ほんとによかった。人の食べ方が気になるようになって、マナーの大切さが身に沁みてわかったよ。」
その言葉を聞いた瞬間、かつての孤独な戦いや、夫との言い合い、義父への複雑な思い……すべてが報われた気がしました。
しつけとは、親から子へ贈ることができる**「一生ものの財産」**です。 お金や学歴も大切ですが、どんな場所でも堂々と食事を楽しめるという「自信」は、子供の人生を必ず助けてくれます。
最後に:今、戦っているお母さん、お父さんへ
家族の中で、あなた一人が「厳しい人」だと思われているかもしれません。 でも、諦めないでください。今、あなたが嫌われ役を買って出ていることは、数十年後、お子さんが社会という荒波に出たときの「最強の盾」になります。
子供が大人になった時、あなたに感謝する日が必ず来ます。 今日も、美味しい食事と共に、大切なマナーを伝えていきましょう。

